第38回 地域開発国際研修コース (2010)
2010年05月24日 - 06月25日
名古屋ほか

本研修コースは、開発途上国で地域開発に携わっている国や地方自治体等の中堅職員を対象に、地域開発戦略のための知識や技術の習得、ならびに日本を始め各国の地域開発経験の交流を図り、視野拡大の機会を提供することを目的として、1971年の設立以来毎年春に開催されているものです。

持続可能な地域開発の究極的な目標は、地域住民の福利厚生と安全を確保することです。このような目標は、地域に最も密着した地方自治体・地域社会・地域住民等が主体となり、適正な役割分担・協力体制を構築することを通じて達成されます。第37回目を迎える今回のコースでは、「持続可能な地域開発」をテーマに、人間の安全保障、環境マネージメント、防災管理に焦点を当て、開発の課題と戦略を検討することによって、開発途上国の国や地方自治体等の職員の能力の向上を図りました。

今回の研修プログラムでは、新たに社会経済開発とガバナンス、地域開発計画とマネジメントの2つのモジュールが追加され、合計7つのモジュールで構成されました。各モジュールのテーマに沿って講義、演習、ディスカッション、ケーススタディ、さらには日本の経験、特に中部地方の実例を学ぶための現地視察を行いました。また研修生自身もリソースパーソンとなり、自国の地域開発の経験や自らの職務に関する課題、その解決に向けての取り組みについて発表を行うことで、より一層の知識や情報の共有化を図りました。各モジュールの内容は以下の通りです。

  1. オリエンテーション:
    研修を理解するのに必要な日本の社会経済的な背景について学びました。

  2. 環境マネジメント:
    持続可能な地域開発を推進するために不可欠な環境マネージメント、とりわけ環境保全型交通体系と持続可能な生産消費形態・3R(リデュース、リユース、リサイクル)に焦点を当て、具体的な施策や取り組みについて検討しました。視察ではスーパーマーケットを訪れ、食品売り場から出た生ゴミが堆肥製造施設に送られ、その堆肥を使って栽培された野菜が店頭に並ぶという循環の仕組みを学びました。気候変動や資源枯渇といった地球規模の環境問題に取り組むためには、官民協働の環境マネジメントが不可欠であるとの認識を新たにしました。

  3. 人間の安全保障:
    持続可能な開発を妨げる経済的、環境的、社会的、文化的な脅威に対してコミュニティの抵抗力を強化させるための人間の安全保障の概念やその重要性について、さらには人間の安全保障を確保するアプローチとして内発的地域開発について理解を深めました。視察では岐阜県郡上市明宝を訪れ、人間の安全保障の概念や内発的地域開発の手法が、地域開発のためのプログラムやプロジェクトの計画や実施にどのように生かされているかを学びました。

  4. 社会経済開発とガバナンス:
    貧困削減のための社会経済開発とそのためのガバナンスについて学びました。日本における貧困削減の経験として、戦後日本の農村で行われていた、農業および生活改良普及員制度や農業協同組合の取り組みが紹介され、現在の途上国で取り組むべき農村住民の能力強化や地域社会と行政の連携についての検討を行いました。また視察で訪れた愛知県豊田市足助では、福祉政策、観光振興そして教育の3つを結びつけたユニークな手法(コミュニティ・ビジネス)により地域活性化を推進している事例を視察しました。

  5. 防災管理:
    阪神淡路大震災(1995年)の経験や教訓、震災後の防災・復興事業について学ぶため、兵庫県庁、人と防災未来センター、アジア防災センター、環境防災科のある兵庫県立舞子高校、北淡震災公園を訪問・視察しました。途上国で頻発する災害や防災について意見交換を行い、コミュニティレベルでの防災の重要性を再認識しました。

  6. 地域開発計画とマネジメント:
    日本における地域開発の計画策定・実施・評価システムに関する歴史および現在の課題について学ぶことを目的としたモジュールです。視察では、岐阜県郡上市八幡と高蔵寺ニュータウンの事例を取り上げ、実際に現地を訪れ、住環境の整備、改善、および保全・活用のための施策について検討しました。又、現場で取り組んでいる地方自治体関係者や地域住民の生の声を聞くことで、住民主導のまちづくりの重要性やその手法について学びました。

  7. 総括:
    コース全体の総括を行い、その後研修生は、各モジュールで学んだ地域開発の知識や手法を反映させながら、自らの職務における問題点や課題を解決していくためのアクションプランを作成し、その発表を行いました。作成にあたっては、他の研修生やUNCRDスタッフとの議論やアドバイスを参考に、より具体的で実行性の高いプランを目指しました。「安全な水供給プロジェクト(ミャンマー)」、「タンセン市の農村コミュニティにおける参加型貧困削減(ネパール)」等のアクションプランが作成されました。

このほか研修生は、国連支援交流協会東海名古屋支部によるフレンドシッププログラムにも参加しました。研修修了時に実施した研修評価会では、研修生達からは「日本や途上国の地域開発の事例を通じて、持続可能な地域開発の課題が明確になり、そのために必要な戦略を検討することができた」といった感想や意見が多く聞かれ、研修目的は達成されたとの評価を得ることができました。

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