「情報通信技術(ICT)と人間の安全保障」プロジェクト
2001年07月1日

UNCRDは、2001年7月に、新プロジェクト「情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)と人間の安全保障」に着手しました。ICTは、地域経済や産業活動の活性化を促すとともに、利便性の向上、行政運営の簡素化や透明性の向上、市民運動のための情報交換、コミュニティの参加機会の拡大など、地域開発にとって重要な役割を担う手段と考えられます。このプロジェクトは、開発途上国の貧困層に対するICTを利用した地域開発の調査と、ICTに関するプロジェクトを行っている組織同士の電子ネットワークづくりの2つを目的としています。また、"人間の安全保障"におけるプロジェクトの効果と影響、ICTによる地域開発における"人間の安全保障"を強化する方法を導き出すことに焦点を当てて、(1)積極的に研究結果を広める、(2)南南協力ための電子ネットワークを確立する、(3)将来の研修のための方針と資料を作成する、という3方面から実施されています。


2001年には、マッディアプラディッシュ州をはじめインドにおけるいくつかの州において現地調査を実施し、ICTの利用度、資金、地域のニーズなどを研究しました。同時に日本の事例も調査しており、第30回地域開発国際研修コースでは、岐阜県益田郡金山町でのICTを用いた福祉健康医療支援プロジェクトや、大垣市ソフトピアセンターの事例などを紹介しました。


ICTを地域開発に適用した事例は、UNCRDより発行されている論文集「Regional Development Dialogue(RDD)」の2002年秋号「地域開発と人間の安全保障のための情報通信技術(ICT)」に掲載されます。RDD2002年秋号は、ICT分野に携わる専門家と当センターの研究員による研究論文、事例調査、そしてコメントを集めたものです。この中では、インドの5つの斬新的なICT導入プロジェクトを取り上げ、ICTプロジェクトが貧困層に与えた影響力、プロジェクトを導入・拡大した際生じた問題、またプロジェクトを持続し拡大するための研修課題に重点を置いて述べられています。また日本の小さな村における優れたICT導入事例もまとめられており、ICT導入によるハードウエア導入といった目に見える変化だけでなく、コミュニティへのソフト面での影響が報告されています。


ICTに関する研究は、第2回デジタルシティ京都会議(京都、2001年)、IT研修コース(バンコク、2002年)、UNCRD第30回地域開発国際研修コース(名古屋、2002年)、および世界情報社会サミット・アジア地域会合(東京、2003年)など、拡大しつつあります。 また、2002年11-12月には、ICT及び開発分野の専門家・実践者・経験者の電子ネットワークを確立するため、「持続可能な地域開発におけるICTの活用戦略」と題したインターネット上でのワークショップ"Eワークショップ"を開催しました。ICTホームページとeワークショップは、ICTの活動情報を豊富に提供し、政府機関、民間セクター、非政府機関(NGO)、国際機関等が意見と経験を分かち合える場となっています。ICTホームページには、ワークショップ開始から2ヶ月の間に3,500件のアクセスがありました。


スリランカへのICTの適用


2003年以降は、スリランカの紅茶農園で働く女性労働者のエンパワメントを目的としたICTの活用を提案しています。 スリランカ政府は、2003年1月に開かれた世界情報社会サミットのアジア地域会議において、e-スリランカ政策を通じた技術革新を公約しました。 その中で同政府は、最もき弱なグループを対象とした情報通信コミュニティセンターの設立を通じて、情報や知識を交換し、少数派の社会参加を促し、能力育成を実施することを主な行動計画としています。


UNCRDが提案しているプロジェクトは、開発現場に携わる人々の協力を促し、ICTが地域開発に果たす役割をより明確にすることで、スリランカにおけるICTに関わる既存の活動を補完することを目的としています。 プロジェクトでは、能力育成活動と平行して、特に国内で最も周辺化されてきたグループの1つである紅茶農園内の女性を対象としたテレセンターの設立を提案しています。UNCRDの経験、コミュニティ開発とテレセンター設立の経験のある南インドの関係者、ICTに携わるスリランカの機関と協力しながら、能力育成とテレセンターの設立を平行しています。


プロジェクトの主な特徴は、南南協力、抵コスト技術と資金的持続可能性、紅茶農園内における女性問題への理解と配慮、紅茶農園内で必要とされている情報の準備とアクセス向上、コンテンツ作成におけるコミュニティ参加のためのボトムアップ参加プロセスなどです。


スリランカにおける紅茶農園内の女性労働者は、主にイギリス植民地時代に南インドから連れてこられたタミル人の子孫で、何代にもわたって主にお茶摘みなどの単調な手作業を強いられ、女性としての差別や社会的地位の低さ、資源への限られたアクセス、外部社会とのコミュニケーションの不足などの問題を抱えながら非常に過酷な条件下で働いてきました。 彼女たちは、様々な機会にも恵まれず、長い間、歴史的、地理的、経済的、社会的、政治的に周辺化されてきた人々です。


紅茶農園地帯であるヌワラエリヤ地方では、母子の死亡率が非常に高く、平均寿命もスリランカで最も低くなっています。 このプロジェクトでのICTサービスの提供が、紅茶農園女性労働者の考え方や、情報や機会に関する認識やアクセスの改善に繋がるとともに、ヌワラエリヤ地方の農園に住む人々とその他の人々の間に存在する情報格差が是正される第1歩となることが期待されています。 プロジェクトの主な目的は以下の3点です。



  • スリランカ政府職員や地元組織が情報の役割や農村開発のためのICTの利用について意識向上するように、南南協力を通じた研修事業を行うこと

  • 女性に焦点を絞った意識向上プログラム、共同体組織化、能力育成活動を企画実施すること

  • コンピュータや通信設備、情報源などを含む、女性を対象にした持続可能なコミュニティ情報研修センターを設立すること


このプロジェクトでは、南南協力に焦点をあてた協働・参加を重視し、UNCRDの専門性のみならず、貧困コミュニティのエンパワメントを目的としたICT活用に幅広い経験のあるインドの1つの専門機関の専門性も活用します。 UNCRDはNGOであるM.S.スワミナタン研究財団(MSSRF)と民間企業であるn-Logue Communicationのこれまでの実績を調査し、戦略を策定し、情報の役割、ICTの利用、コミュニティ開発戦略、テレセンター活動の財政や技術に関して、地元組織や計画者と共に教訓を学ぶとともに、同分野に知識と経験のあるコロンボ大学とも協力してます。

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